今生はBL道楽

商業BLコミックを消費しつづけている。

点になりながら手を振っていた(ような気がする)/柳沢ゆきお「ワンダーラスト」

最近はほぼSpotifyで誰かが作ったプレイリストをぼんやり流しつつ、気に入ったものがあればピックアップして聴く、みたいな音楽とのかかわり方をしているのですが、降谷建志の「THE PENDULUM」を聴いていたら「ワンダーラスト」という曲が入っていて、ふと思い出したので、柳沢ゆきおさんの「ワンダーラスト」紹介します。

ワンダーラスト (F?BOOK comics)

ワンダーラスト (F?BOOK comics)

 
THE PENDULUM (通常盤[CD])

THE PENDULUM (通常盤[CD])

 


降谷建志/「ワンダーラスト」ミュージック・ビデオ オリジナルVer.

あらすじ

高校卒業後、数年たって行われた同窓会で集まった4人の幼馴染たち。久しぶりに顔を合わせ、ゆるやかにはじまった宴会だったが、彼らが集まったのには本当の理由があった。

中学最後の夏休みに行方不明になった「ヨリちゃん」から届いた手紙をきっかけに、思春期に起きてしまった事件と、彼らがひっそりと持ち続けた秘密が暴かれていく。

そのとき彼らが社会のなかでは、まだ子どもだったとして

わたしが謎の共感をこの作品に抱くのは、自分が過ごしてきた思春期の空気を思い出すからかもしれない。作者もあとがきで「凶行世代」という、時代のなかで語られてきた(あるいは語ってきた)ことについて軽く触れているけれど、

「凶行世代」というそれっぽい言葉を名刺みたいに差し出してしまう我々の、それをまるで容易に共有しているかのような感覚に責任の一端があるのではと、とは言え昇華出来るわけもする気もさらさらなく、それでも、事実として凶行に走った人たちを見送った事実は其処此処にあるわけで。

読み返して、わたしもまた読者として、はっとしたのでした。

彼らがなぜ事件を起こしてしまったか。それを彼らのみの責任として処理してしまったこと、あるいは事件を起こしてしまうこと、その動機や心持ちにどこか共感を持ってしまった、もっと言うと「共感」にとどめ、あるいは「自己責任」に回収してしまったことなど、改めて問い直さなければならないと思うのでした。とはいえ、これはわたしが一歩、苦しさ、みたいなところから出てしまったから(出て悪いことはないのだろうけれど)、出てしまったがゆえにこんな風に思うのだ、とも。

コミックスには、幼馴染の一人で、高校卒業直後に交通事故で亡くなったコンちゃんのお話が描きおろしで入っています。

コンちゃんも社会からこぼれてきてしまったひとりで、彼が繰り返しついてきてしまった「嘘」を、「本当」にしてくれたのは主人公の一人であるノンだと思うのだけれど、そういう、教室で、家庭で、どうしようもなくなっていくひとりを、ふと救ってくれた一言と、それを思い出してつぶやく独り言に胸を締め付けられる。