今生はBL道楽

商業BLコミックを消費しつづけている。

ここにあるのは固有の生だよ/座裏屋蘭丸「VOID」

繊細で美しい絵としっかりしたストーリー、性描写もきっちりあるのに、美しすぎて、そうかこれがエロスかとはっとする、座裏屋蘭丸さんの「VOID」を紹介します。

デジタルコミックス版 

いま一般的に流通しているのがこちら。

VOID (ビーボーイデジタルコミックス)

VOID (ビーボーイデジタルコミックス)

 

紙のコミックスのほうは完全受注生産だったのでいまはものすごい高値で取引されております…… (そして18禁だったのだね……デジタルのほうは修正がされており18禁ではありません)。

VOID-ヴォイド-

VOID-ヴォイド-

 

あらすじ 

過去、ヒューマノイド保護局に勤めていた主人公、マキのもとになかば押し付けられるような形でやってきたヒューマノイドのアラタ。ヒューマノイドはロボットではなく、人と同じ寿命を持つ有機体であり、違法製造や虐待を取り締まる過程で、アラタもまた保護されたのだった。

アラタは容姿と記憶の一部を「実在する人間」からコピーされており、かつ「すりこみ」が施されていた。すりこみによりマキへ愛情を示すようになったアラタだったが、マキは手酷く扱う。それには理由があって――。

アラタは誰のコピーなのか、そして本当にただのコピーなのか

マキの歪んだ欲望やアラタに対するひどい扱いはすべて過去に原因があるのですが、アラタにそれは関係ありません。きちんと愛してほしい、オリジナルと一緒にしないでほしい、とアラタは健気にマキに愛情を向け続けます。その健気さが切ないのですが、アラタと出会ったばかりのマキは、中盤のマキによる分析によれば

…生まれたてのヒューマノイド相手に

俺はこの2週間最低のヤリチン野郎だったよ

とのことなので、マキは最低のヤリチン野郎です。

ただ、物語が進むにつれてマキにも変化が訪れます。心を交わし、ともに時間を過ごすうちに、マキはアラタをひとりの人間として見つめられるようになります。

そうして過去を乗り越えた二人が何を選択するのか、また過去とは何だったのか、それは読んでからのお楽しみということで……。

余談

座裏屋さんは今6冊くらいコミックスを出していて、異国を舞台にしたものが多いのですが、圧倒的に長髪美丈夫×短髪男の子が好きなんだなあという印象。

いまDariaで連載中のコヨーテもおもしろいので、ぜひ読んでもらいたい。人間と狼男ものだよ。

コヨーテ I (ダリアコミックス)

コヨーテ I (ダリアコミックス)

 
コヨーテ II (ダリアコミックスe)

コヨーテ II (ダリアコミックスe)

 

余談の余談

商業BLはいいぞ、と言ったものの固有の作品を取り上げようとすると、どこか恥ずかしさがこみ上げてくるのは、読書という行為が非常に個人的なものだからかもしれないですね。作品のすばらしさとは関係のない、ごくごく個人的なことです、が、ええい、隠したところでしょうがない! また次回! ガンガンいこうぜ。